人新世を生きる |
今日、地球温暖化により、巨大台風・洪水・山火事の発生、海水面の上昇、氷河の縮小、永久凍土の融解など急速に進んでいます。また、土地の乱開発、森林伐採、プラスチック汚染、海洋資源の乱獲は生物多様性を低下させています。私たちの将来の生活が危ぶまれています。 人新世第3ステージに生きる私たちは、持続可能な地球の未来に向けてどのような行動をしたら良いでしょうか。私たち一人一人が地球システム(ジオエコシステム)の一員であり、私たちの行動一つ一つが地球システムにつながっていると考えれば、地球を愛する(Geo Philia)意識をもって、行動をしなければならないと考えます。 |
目次:1.地球温暖化に対する国際的動き 2.洪水を防ぐ-川の自然再生化 3.EUの自然再生法 4.生け垣の再生 5.ゴータの小さな森 6.湿地の価値 7.私たちはどのように生きていけばよいのか 8.自然との再調和 9.勇気と謙虚さが世界を変える |
1.地球温暖化に対する国際的動き;気候変動、生物多様性、環境問題への取組に関する条約 |
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1989年、私は「西ドイツ農村におけるビオトープの保護・再生」と題して発表した。これは、農地整備事業や化学肥料・農薬投下などによって農村の自然が犠牲になってきたという反省に立って、農地整備の際に、ビオトープの保護・再生した地域の二三の活動を紹介したものである。その一つは、農地整備の際に、川筋まで利用されていた農地を約100m幅を自然再生化のために開放したもの。また、人工的に直線化されていたエムス川を元の蛇行河川に戻し、かつ農地を潰して約10ヘクタールの湖をつくるという自然再生化の事業も紹介した。生物多様性が課題となっている今日、このような自然再生化事業がドイツのみならずEU全体で進められるようになった。 次に紹介する事例は、2023年12月に発生したドイツの洪水と自然再生化に関する、Riffreporter News、2024年2月19日配信の「Konsequenz aus Hochwasser: „Auen kann man nicht mehr als Ackerland nutzen“」を、簡単にまとめたものである。 2023年12月 ニーダーザクセン州のアラー川など3河川で洪水が発生した。その原因の一つは、過去の河川改修により堤防で囲まれて直進化されたことである。判断限の湖や湿地は埋め立てられて耕作地に転換した。氾濫原の技術的な再構築により、極端な降雨時には、以前のように水が氾濫原の幅全体に分布しなくなり、水位が急速に上昇する。下流の堤防が十分に高くないか決壊した場合、川は氾濫し災害が発生する。 気候変動は、より強い干ばつとより強い洪水をもたらす。水文学者は、自然を基盤とした解決策を最終的に全国的に実施しなければならない。つまり氾濫原の景観を回復しなければならないことを要求した。かつての川の領分を復活させる川の自然再生化である。 ドイツ全土で、すでに同様のプロジェクトが多数行われている。しかし、エルベ川やハヴェル川下流域のような非常に大規模なプロジェクトは、再自然化されているが、部分的である。 EUのいわゆる「水の基本方針」は20年以上にわたってこのような変革を求めてきた。また、2013 年の夏の大洪水の後にドイツ連邦政府と州政府が開始したプログラムも同様である。しかし、これまでのところ、圧力も資金も、実際に大規模な変化をもたらすには十分ではなかった。 2月末にEU議会で可決され、その後加盟国理事会で可決される予定の法律は、新たな勢いをもたらすと期待されている。自然再生法は、EU内の2万5000キロメートルの河川を元の自由な流れに戻し、洪水原を含む損傷した生態系を再生することを目的としている。 https://www.riffreporter.de/de/umwelt/auen-wie-flussrenaturierung-deutschlands-landschaft-vor-hochwasser-schuetzt | ◆横山秀司(1989):西ドイツ農村におけるビオトープに保護・再生。地理、34-8、128-133. 再録:横山秀司(1995):『景観生態学』古今書院、138-155. (1898年論文を大幅に加筆し、図と写真を加えた) ![]() 自然再生されたエムス川(1991年) ![]() 上の写真とほぼ同じ場所のエムス川(1995年) ◆このような川の自然再生化が西ドイツではすでに1980年代に実施されていた。 |
森と湿地は二酸化炭素を吸収し保留することで、温暖化を抑制する効果があり、かつ生物多様性にも貢献する。森と湿地を再生することは、人新世第3ステージにおける地球にとって重要な方策の一つである。 ヨーロッパ連合(EU)では、「自然再生法 Renaturierungsgesetz」が2024年6月に承認された。 これは、国のすべての自治体に対して、損傷を受けた生態系を広範囲で再生することを義務付ける世界初の法律である。海から山林の高地まで、2030年までにEUの表面積の5分の1で自然再生策が開始される。 また2050年までに、損傷を受けたすべての生態系が自然再生策の恩恵を受けることになっている。これには、例えば、ヨーロッパの25,000キロメートルの川が再び自由に流れるようにすること、湿原を再湿潤化すること、生け垣や果樹園などのビオトープを作ることなどが含まれる。長期的な食糧生産を確保し、気候保護を強化するために、自然再生策を通じて、特に森林や農業地帯に生命が戻る。また、猛暑の増加を踏まえて、都市の緑化も強化される。 <<a href="https://www.riffreporter.de/de/umwelt/eu-beschliesst-bahnbrechendes-gesetz-renaturierung-geschaedigte-oekosysteme">
| ◆果樹園のビオトープとは、実のなる果樹を植えることによって、実が鳥や小動物のエサとなり、生物相を豊かにする意図がある。 ◆ビオトープとは、「ある生物群集の生活空間」である。詳細は、横山秀司(1989)「西ドイツ農村におけるビオトープの保護・再生」を参照されたい。 |
生け垣再生 1980年代以降、西ドイツの農地整備事業は、自然と景観の保護・保全し、育成することを目的としてきた。集落を結ぶ並木道を作り、畑と畑の間の生け垣(Hedge)、池など多数のビオトープをネットワーク化して、村の景観と生態系を豊かにすることであった。 今日、生け垣は二酸化炭素を保留し、温暖化抑制に役立ち、生物多様性を豊かにすることが明らかにされた。そのため、EUの自然再生法においても、生け垣の再生を促している。以下、その概要を示す。 メクレンブルク・ポメラニア西部のグラムボウ村の北にある2つの大きな畑の間には、昨年の秋からで新しい生け垣が作られている。州の環境農業大臣は、植え付け中に自ら手を貸し、若い茎のオーク、サンザシ、ヘーゼルナッツを植えた。新しい生け垣の長さは合計500メートルになります。これは、「ヘッケンチェック」と呼ばれるいわゆる「エコロジカルセキュリティ」を購入した寄付者によって支払われた。東ドイツ時代にメクレンブルク・フォアポンメルン州だけでも、6500キロメートルの生け垣が破壊され、大規模な農業地域が形成されたが、今、その生命は戻ってきている。 チューネン農業機構保護研究所では、「CarboHedge」プロジェクト称した研究が行われている。土壌中にどれだけの有機炭素が貯蔵されているのか、生け垣のバイオマスはどれくらいなのか、また、生け垣の造成が土壌中の腐植土形成による炭素保留、さらには気候保護にどれだけ貢献できるのかを調査している。 その成果の一つは、耕作地に新たに生け垣を植えると、1ヘクタールあたり平均約380〜400トンの二酸化炭素が保留されることを明らかにした。また、1950年代以降、ドイツで破壊された9万キロメートルの生垣が再生されれば、現在のドイツ国内の年間排出量15万人から20万人、または2つのセメント工場を20年間で相殺できるという。(RiffReporter News (2024年8月17日)などを参考にした)。 | ◆ビオトープネットワークに関しては、『景観生態学』(横山1995)pp.143-147.を参照されたい。 ![]() 南独の生け垣のある農村風景 ![]() 道路際の藪化した生け垣 |
ゴータの小さな森:都市の気候のオアシス EUでは、気候温暖化対策として、さまざまな自然再生が取り組まれている。その一つは、都市の中に森をつくる活動である。今、日本の生態学者・宮脇昭が考案した「小さな森づくり」が広まっているという。2024年11月28日配信のRiffReporter Newsから、ドイツの小都市、ゴータでの取組の一部を紹介したい。 森林は、CO₂を貯留し、大気の質を改善し、日陰を作り、土壌に水を保持し、洪水から保護するなど、気候保護にとって非常に重要だ。テューリンゲン州のゴータ市(人口4.7万人)では、3年前、休耕地にが植林が行われ、「小さな森づくり」がなされた。これはドイツで最初のいわゆる「小さな森」のひとつである。このコンセプトは、日本の生物学者宮脇昭氏とインドのエンジニア、シュベンドゥ・シャルマ氏によるもので、多くの樹種を狭い地域に密集させて植えることで、生物多様性を促進し、急速に成長する都市の森林を作り出すというものである。 ゴータには現在、710平方メートルの土地に約2,500本の樹木と90本の低木が植えられている。 慎重に選別され、密集して植えられ、街の真ん中に「都会の原野」が作り出されています。ミニ森林は微細な塵や排気ガスをろ過し、動物や植物の生息地を提供します。しかし、森林が提供するものはそれだけではありません。住民の生活環境を改善し、新鮮な空気を創出し、交通量の多い道路に小さな緑のオアシスを作り出します。ゴータ市は最近、このプロジェクトでテューリンゲン自然保護賞2024を受賞しました。 <div> <https://www.riffreporter.de/de/umwelt/klima-klimaschutz-klimawandel-lokales-staedte-nachbarschaft-buerger-initiativen この宮脇方式の「小さな森作り」はオランダ、フランス、イギリスなど12カ国の都市でも行われているという。 | ◆宮脇昭(1928-2021):横浜国立大学名誉教授。日本の生態学の第一人者であった。『植物と人間-生物社会のバランス』(1970 NHKブックス)は、代表的な著作であるである。 ◆「小さな森づくり」は、ドングリをポットに植えて発芽させた苗を植え付ける。 ![]() 宮脇方式によるコナラのポット苗。 秋にドングリをポットに入れ、乾燥させないように冬越しすると、4~5月に芽が出てきます。これを2~3年ぐらい育成したものを、植え付ける。 |
EUでは、「自然再生法」が成立し、地球温暖化の抑止、生物多様性への貢献などから湿地の再生・拡大が進められている。しかし、ウクライナ戦争後、湿地の役割が追加された。以下、2024年10月7日配信のRiffrepoterの記事を抜粋した。 世界中で湿地は猛烈なスピードで破壊されてきた。国連条約は、世界的に重要な湿地を保護することに成功した。しかし、全体としては、泥炭地、沼地、源流、氾濫原の破壊は、森林伐採の3倍の速さで進行している。 科学者たちは、湿地の下の土壌に何千年にもわたる植物の成長から得られた膨大な量の炭素が眠っていることを発見した。これは、その領域が乾燥すると二酸化炭素として放出される。地球温暖化の原因となっている世界のCO₂排出量の少なくとも4%は、すでにそれによるものであり、これはすべての航空産業の排出量に相当する。 気候保護に関して言えば、湿地の保全は、石炭火力発電所の閉鎖という目標と同じくらい重要な要素と見なされている。泥炭地には、大気から二酸化炭素を除去する任務さえ与えられている。この目的のために、排水された泥炭地を再び湿らせ、新しい植物の成長を開始するための作業が行われている。 湿地が新たな光を浴びている2つ目の理由は、世界的に深刻化している水危機である。湿地の生態系は降水量を貯蔵するため、地下水を更新する上で優れた役割を果たしているかが明らかになった。都市にとっては、周囲を冷やすことで巨大なリビングエアコンのように機能する、重要な「生態系サービス」である。 ウクライナでは、湿地に3つ目の重要な役割が当てられている。軍隊はほとんど進軍できず、野戦キャンプの建設はほとんど不可能で、船や水陸両用車でさえ、ほとんど全く役に立たない。この可能性がウクライナ政府によって本当に認識されたのは、侵攻後になってからである。2022年2月末、ロシア軍が北から首都キエフに急速に接近していたとき、軍事戦略家はまず、氾濫原を氾濫させて敵の前進を阻止するために、キエフの北端にあるイルピン川の堤防に小さな穴を開けた。3月の初めに、水は自由に制御され、巨大な洪水地域が作られました。ほぼ一夜にして修復された沼地の大きな価値が明らかになった。ロシア軍の進撃は停止し、戦車は沼地の地下に沈んでいった。少し遅れて、ロシア軍は進軍を終えた。それ以来、地元の環境保護主義者たちは、イルピン川が軍の戦闘員と同じくらい首都を守る上で重要だったため、イルピン川を「英雄の川」と改名し、湿地として恒久的に保護することを求めた。 湿地は気候保護、作物の保護、都市の冷却、そして侵略者に対する防衛において、実は非常に重要な味方であることがますます明らかになっている。
| ◆日本では、戦前の地形図は大日本帝国陸地測量部が発行していたので、軍湯目的で地図記号が使われた。下の図のように、水田は、兵隊・戦車・大砲が通行可能ま乾田、兵隊・戦車が通行可能な水田、すべ て通行不可能な沼田の3つに分類されていた。 ![]() |
私たちはどのように生きてゆけばよいのでしょうか 本ホームページ(人新世-Anthropocene)で人新世第3ステージにおいて、「私たちはどのように生きてゆけばよいのでしょうか」と投げかけた。その問いに対する回答の一端を、国連大学(UNU-EHS)の2025年レポート「2025 Interconnected Disaster Risks」(2025年4月9日公開)が提示している。この報告書は、相互に関連した災害リスクの現状を分析し、リスクを軽減し持続可能な地球への移行のための5つの基本的事項を取り上げ、その解決方法として「ディープ・チェンジ理論(ToDC)」による提言を行っている。以下、レポートの概略である。 気候変動は激化し、化石燃料の使用と排出量は依然として新たな高みに達している。種は前例のない速さで絶滅しているが、それでも私たちは生態系を破壊し続けている。科学者による何十年にもわたる警告にもかかわらず、新たな極端な悪影響がほぼ毎日ニュースになっている。私たちは何をする必要があるのかを知っているが、なぜそれをしないのであろうか-気候変動、生物多様性の損失、汚染、不平等は深刻化している。 このレポートでは「相互に関連した災害リスク」に関し、リスクを軽減するために社会ができる5つの基本的移行をあげている。 1.廃棄物を再考する: ゴミから宝物に 2.自然と再調整: 分離から調和へ 3.責任を再考する: 私から私たちへ 4.未来を再考する: 数秒から数世紀へ 5.価値を再定義する:経済的豊かさから地球の健康へ 1.廃棄物を再考する:世界の「取る・作る・捨てる」モデルは持続不可能であり、年間20億トンの家庭廃棄物が発生している。「廃棄物」の概念を再考し、耐久性、修理、再利用を優先する循環型経済への移行を求めている。日本の上勝町の循環型戦略を成功のモデルとしている。 2.自然との再調整;人類は自分自身を自然から分離し、自然よりも優れていると見なすことをやめなけれはならない。人間は自然と共存する代わりに自然のプロセスを制御しようと試みてきたが、何世紀にもわたる搾取が森林破壊、種の絶滅、生態系の崩壊につながっている。自然を破壊することは、きれいな空気や水、食料、避難所として使用される材料など、人間の生存に必要な最も貴重な資源の一部を破壊する。 3.責任を再考する:世界は80億人以上の人々が共有する家であるが、資源と機会は不均等に分配されている。この格差は、温室効果カスの排出や気候変動の影響の感じ方にも及ぶ。最も裕福な国や個人が排出量に不釣り合いに貢献している一方で、最も貧しい人々が気候関連災害の矢面に立たされている。 4.未来を再考する:短期的思考、つまり「プレゼンティスム」の問題が意思決定を支配している。社会は「今ここ」に注目する傾向があるため、私たちは責任を将来の世代に移している。今日生きている人々が、また生まれていない何兆もの人々の条件を決定しており、多くの点で、私たちは将来の世代に成功のための準備をするのではなく、より多くの課題を抱えた世界を残すことになる。 5.価値の再定義:世界のGDPが増加する中、世界は豊かになっているが、世界の富が増えたからといって、世界の繁栄と幸福が増すわけではない。給付金は平等に分配されておらず、地球の健康は低下している。通常、経済的価値が他の価値よりも優先される価値の不均衡を明らかにしている。経済成長よりも幸福度と生態学的バランスを優先するブータンの国民総幸福指数などの代替モデル引用している。 ディープ・チェンジ理論による提言-私たちがすべきこと(抜粋) ◆リサイクルは表面的な移行であり、システムの目標を変更したり対処したりすることなく、既存のシステム内で機能する。この場合、より多く生産し、より多く消費する。表面的な移行は、システムの目標を転換しようとするより深い変化と一致する場合にのみ変革をもたらす。たとえば、消費を増やすという目標から、資源は有限であると信じ、必要なものだけを使用するという目標へと移行する。 ◆ケアの境界の拡大。「ケア」とは、自分を超えた存在に対する気配り、配慮、思いやりを指す。ケア倫理では、すべてのものが互いに関係して存在し、すべてが相互に依存していることを認識する。このケア倫理の方策は、責任を再考し、価値を再定義する変化に関連しており、私たちは地球を他の人々と共有しており、幸せで健康である価値を促進する。 ◆私たちは、自然と再び調和するための努力の一環として人間以外の存在を含めることによって、ケアの倫理を広げることができる。人間以外の存在に対してケアの倫理を採用することで、私たちはそれらの固有の価値を認めることになる。これは、私たちがそれらを単に人間の利用のための資源としてではなく、地球コミュニティの仲間として、配慮に値し、そして生態系の中で健全な存在を維持する機会を与える存在として見るべきであることを意味する。 ◆私たちは、自然との調和と廃棄物の見直しという両方の目標を達成するために、ケアの範囲を無生物にまで広げよう。山、川、石、風といった地球上のこれらの部分は、生態系の機能に不可欠な役割を果たしている。したがって、私たちは川や山を大切にし、それらが生態系の健全性を支えなければならない。 ◆充足感の考え方の採用。これは、無限の物質的欲求を満たそうと努力するのではなく、快適に暮らすために基本的なニーズを満たし、生活の質を優先する意欲を持つことと定義される。充足に向けてこの内面的な移行には、一部の人々が特定の贅沢や習慣を放棄し、他の人々が基本的な必需品を享受できるようにする必要がある。たとえば、所得の増加は肉の消費量の増加と関連しており、畜産業は世界の温室効果ガス排出の主要な要因となる。そのため、環境への影響を避けながら経済成長を促進するという「グリーン成長」神話(を追求するのではなく、充足感という考え方を通じて消費レベルと幸せや健康を切り離す方法を見つけるなければならない。 ◆謙虚さに基づくアプローチ。人間を、生態系内の多くの動物の中の一匹の動物として認識し、特定のニッチを占めながらも、私たちが暮らす他の種やプロセスとつながっているという認識を育む。「エコ中心」倫理として知られるこの視点は、人間以外の存在をより大きな全体の個々の構成要素としてケアし尊重するという道徳的義務を強調しており、持続可能性にとって不可欠である。 ◆自然と同じように、私たち人間も皆同じ惑星に住み、最終的には同じ運命を共有している。人間は本質的に他人より優れているわけではない。謙虚さは、協力的な行動、公平さ、寛容さを高めることがわかっている。たとえば、文化的謙虚さとは、権力の不平等を再調整し、「専門家」または権威ある立場を放棄して、対等な立場での協力関係を構築するための継続的な取り組みである。これにより、気候変動などの地球規模の問題への取り組みがより包括的になり、地域のニーズをより尊重したものになるであろう。 | UNU-EHS は、ドイツのボンにある国連大学環境・人間の安全保障研究所。環境災害や気候変動による現在および将来のリスクを軽減することにより、人間の安全保障と福祉の促進に焦点を当てたシンクタンクである。 上勝町: 徳島県勝浦郡上勝町、人口1457人(2022年)。かつて「葉っぱビジネス」で有名になった。 2003年から「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、リサイクル、リユース、リデュースを実践し、現在では80%を超えるゴミをリサイクルしている。 詳細は以下のサイトを参照されたい。https://interconnectedrisks.org/2025/media https://interconnectedrisks.org/ |
自然と再調和をする5つの理由:分離から調和へ 国連大学の報告では、「人間は地球の陸地表面の約95%を変えた。私たちは、人間の利益のために広大な都市を建設し、森林を伐採し、川をせき止めてた。これらの活動は、しばしば人類の勝利として歓迎され、目覚ましい進歩と発展を可能にした。しかし、この考え方は、地球の健康よりも人間のニーズを優先している。私たちは自然を自分の都合で利用したが、そうすることで地球とその生命の維持を危険にさらしている」と述べ、以下の5項目(概略)を挙げて、再び自然との調和を図ることの必要性を強調している。 1. 自然は単なる資源ではなく、私たちの生命線 何世紀にもわたって、社会は自然を私たちとは別のもの、つまり採取、改変、制御する原材料のセットと見なすように教えられてきた。しかし、この考え方は、健全な生態系がなければ私たちは生き残れないということを無視している。きれいな空気、新鮮な水、食べ物が必要であるが、これらはすべて自然から供給されている。森林を破壊したり、湿地を燥燥させたり、海を乱獲したりすると、私たちが頼りにしているシステムそのものが削られてしまう。 2.自然を制御しようとすると、しばしば裏目に出る 私たちは長い間、自然を自分たちの計画に合うように強制しようとしてきた、これらの短期的な解決策はしばしば長期的な問題を引き起こしている。フロリダのキシミー川では、かつて運河化されたが、その一部が復元されると、生息地は湿地の生物種が戻った。健全な湿地は淡水を提供し、洪水の抑制にも役立ち、干ばつや洪水などの極端な気象に直面したときには、人間社会にも利益をもたらす。 3.生物多様性の喪失は、セーフティネットの喪失を意味する 現在、100万種以上の動植物が絶滅の危機に瀕している。両生類、鳥類、魚類、哺乳類、爬虫類の個体数は1970年以降約70%減少し、既知の顕花植物の推定45%が絶滅の危機に瀕している。これは、私たちが住んでいる世界の安定性に直接影響する。 生物多様性を守ることは、地球と私たち自身を守ることである。 4.自然と生物多様性は敵ではない 自然を征服しなければならないという考えは普遍的ではない。多くの場所で、人々は長い間、環境のリズムと調和して生活してきた。ハワイ、オーストラリア、メキシコの先住民コミュニティは、木、川、ハチドリを家族の一員と考えている。この親近感は、人間と自然との間に分断を生み出すのではなく、自分たちが自然の一部であるように感じること、自然に逆らうのではなく、自然と協力する方法を見つけるのに役立つ。 5.自然についてどう考えるかが、私たちが何を作るかを方向づける 環境被害の規模に圧倒されるのは容易にわかる。しかし、回復の物語は、変化が可能であることを示している。私たちが自然にスペースとサポートを与えれば、自然は癒すことができる。ダムでせき止められた川、伐採された森林、干拓された湿地の背後には、私たちが世界の中で自分たちの立場をどう見ているかという選択と反映がある。私たちの生活に自然のプロセスを再び調和させることで、私たちは生態系における役割を認識し、地球全体のバランスのとれた回復力のある未来を確保することができるできる。 | 2025年5月20日 UN University https://unu.edu/ehs/article/5-reasons-realign-nature-separation-harmony> |
勇気と謙虚さが未来を変える。 朝日新聞2025年6月12日(木)13版に、アイスランド大統領を招いたトークイベントの記事が掲載されていた。そのタイトルは「勇気と謙虚さが未来を変える」であった。主たる内容はジェンダー平等であり、「女性に欠けている能力があるとすれば自信だ。自分は何もかも知らないと思ったとしても問題はない。その姿勢は財産なのだ。勇気のない謙虚さは世界を変えない。しかし、謙虚さのない勇気は、世界を悪くした」と語っていた。この「謙虚さ」というフレーズに目にとまった。2025年の国連大学の報告書「相互に関連した災害リスク」に関し、リスクを軽減するために社会ができる5つの基本的移行をあげていたが、その解決策の一つに「謙虚さに基づくアプローチ」があったからである。 報告書では、「謙虚さは、自分よりも偉大な何かが存在し、人生は相互依存的かつ関係的な観点からアプローチされるという信念を意味する」と定義して、論を進めている。以下、概略する。 これは、自然との再調和のケースで最も明白である。謙虚さに基づくアプローチは、人間を、生態系内の多くの動物の中の一匹の動物として認識し、特定のニッチを占めながらも、私たちが暮らす他の種やプロセスとつながっているという認識を育むであろう。人間が本質的に自然界の他の生物より優れているわけではないことを認識することで、他の種や生態学的プロセスにも考慮に値する利益があることを認めることができる。ケア倫理と同様に、「エコ中心」倫理として知られるこの視点は、人間以外の存在をより大きな全体の個々の構成要素としてケアし尊重するという道徳的義務を強調しており、持続可能性にとって不可欠である。 責任を再考する場合にも同様の論理が当てはまる。自然と同じように、私たち人間も皆同じ惑星に住み、最終的には同じ運命を共有している。人間は本質的に他人より優れているわけではない。人種、性別、国籍、階級の区別は、現在のシステムによって発明され、支えられている社会的構成概念である。謙虚さは、協力的な行動、公平さ、寛容さを高めることが知られている。たとえば、文化的謙虚さとは、権力の不平等を再調整し、「専門家」または権威ある立場を放棄して、対等な立場での協力関係を構築するための継続的な取り組みである。これにより、気候変動などの地球規模の問題への取り組みがより包括的になり、地域のニーズをより尊重したものになるであろう。 | 2025年の国連大学の報告書「相互に関連した災害リスク」 https://interconnectedrisks.org/ |